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「懐かし醤油らーめん ¥500+味玉サービス」@下町ら~めんの写真平日 曇天 11:50 待ちなし 後客4名

〝ニューオープン 探検記〟

台風15号の関東直撃の予報が大きく取り沙汰されている日曜日の午後、何のためらいもなく草加へと向かっていた。

※ ここからはラーメンレビューとは関係ない内容が一部含まれているので閲覧にはご注意下さい

約十年ぶりに訪れた草加の健康センターに入ると、まずは見知らぬ人のカラオケの歌声で出迎えられた。現在の時刻は午後三時だが受付と同じフロアにある大広間では、昼間から酒を飲みながらカラオケに興じている入浴客で賑わっている。楽しそうな歌声をBGMに聴きながら、下足箱の中に靴を入れてフロントにてロッカーキーと館内着を受け取る。ロッカーキーと聞いて大昔にマッチが CMをしていたスナック菓子の〝ハウス ロッカッキー〟を思い出す60年代生まれは私だけではないだろう。

ラッコのトレードマークで親しまれる健康センターは埼玉県南東部に住む方なら誰でも一度は訪れた事のある入浴施設ではないだろうか。幾何学模様のような不思議な柄の館内着に着替える前に大浴場へと向かうが、最近の若者のサウナブームとは無縁の人生の重鎮たちが集まっている。もの言わず、じっくりと湯船につかる先輩方の前では私など赤子のようなものだ。そんな地元の長老たちの邪魔にならないように、よそ者ながら大浴場を一巡りさせてもらう。

なんと言ってもサウナの室内の広さが気持ちよく、ひな壇も三段あり好みの温度帯を楽しむ事ができる。親切にもそれぞれの段ごとに温度計が設置されてあり下段は 80°Cで中段は 90°C、私の好きな最上段は 95°Cを示している。温度計よりも実際の体感温度は高く、10分もあれば十分に蒸される事が可能だ。その後は室外に設けられた露天の水風呂にて冷却作業を行うのだが、水風呂には珍しい泡風呂のようなパイブラ機能が魅力的だ。水温計では 14.8℃のデジタル表示がされているが、バイブラ効果で身体の表面に体温の膜を張る事が出来ないので更に体感温度は低く感じる。ただでさえ低めの水温なので、無理をして我慢しすぎると身体の末端が壊死しそうになる。本日は危うく気を失いそうだった水風呂の洗礼を受けた後は、露天に置かれたビーチチェアにて外気浴でひと休みする。

ラーメンに添加されている MSGは苦手だが、SMGを繰り返すのは至福の時間だ。S=サウナ M=水風呂 G=外気浴を3セットも行えば、そこには〝ととのう〟世界が待っている。私の中で〝ととのう〟には持論があって、最も重要なのは外気浴での〝風の動き〟である。高温のサウナで毛細血管が拡張した後に、水風呂の冷水で拡張した血管を収縮させる。その後は冷え切った身体を外気浴で休めてやるのだが、その時に温かい外気が身体を撫でると徐々に縮んだ毛細血管が広がっていくのを感じられる時があるのだ。そのジワジワとした皮膚の痺れこそが私の〝ととのい〟であり、外気温の低い冬場には味わう事の出来ない〝夏のととのい〟なのだ。そんな肉体に感じる悦びのフェノメノンとでも言うべき〝ととのい〟を2セット目から感じさせてくれる、草加健康センターの整頓力は紛れもない本物の能力だ。

その他にも、ここならではの名湯が数多くあるのだが全てを書き記しているとお叱りを受けそうなので、命に関わる注意すべき点だけをお伝えしておく。それは「電子マッサージ風呂」の事で文字通り低周波の電気風呂で、心臓病などの持病がある人は利用しないように注意書きがしてあるが健康体の人でも甘くみたら痛い目に合う電気風呂だった。各地で幾多の電気風呂を体感してきたので恐れもせずに入ったら、湯船の真ん中で全身が電気ショックで硬直してしまったのだ。声もあげられない程に引き攣った身体を低周波が止まるサイクルに合わせて少しずつ脱出を図るが、なかなか思うように進まない。こんなに狭い湯船が大海原のように感じられ、太平洋の真ん中で一人漂流しているような恐怖を感じた。まさに必死の思いでビリビリ地獄から抜け出せたが、二度とあの電気風呂には近づかまいと心に誓った。

先程までの見事な〝ととのい〟が台無しになってしまったが気を取り直して大広間の食事処へと向かうと、二時間ばかり大浴場にいたので夕刻の5時を過ぎていた。カラオケ大会もひと段落したようで、大ジョッキの生ビールを飲みながら大好きな大相撲中継を観ていた。私の贔屓にしている伊勢ヶ濱部屋の新鋭力士の照強関の初日の一番に差し掛かった瞬間に、再びカラオケショーが始まってしまった。

思った以上の大音量にも驚いたがステージ上では、ここぞとばかりに歌自慢を披露する諸先輩方が楽しそうに歌われている。年代的に私も知っている曲ばかりではあるが、春日八郎さんの ♪ お富さんや、笠置シヅ子さんの ♪ 東京ブギウギは、ものまね番組かスナックのカラオケでしか聴いた事がないような歌たちのオンパレードだ。しかもよく見ていると歌っているのは決まった四名だけで、その方たちがローテーションで持ち歌を披露しているだけだった。そんな四名だけの歌謡ショーを、午後9時のカラオケタイム終了まで4時間たっぷりと聞かされる事になった。終盤にはカラオケだけでなく、踊りも披露し始めてステージ上は大盛り上がりを見せていた。

ラストソングが終わりカラオケのモニターが地上波テレビに切り替わると、忘れていた台風 15号のニュースが報じられていた。どうやら夜中から朝方にかけて関東を縦断するらしいので、今夜は自宅に帰らずにプライベート個室を利用して宿泊する事にした。そうと決まれば怖いものなしなので、静けさを取り戻した大広間にて酒とツマミを夜中まで楽しんだ。食事メニューにはラーメンだけでも17種類もあり小腹が空いてきたので悩んだが、深夜のラーメンはろくな事がないので自制してベッドに入ったが6時間も大広間で呑んでいたようだ。

明け方には外の様子の異変で何度も目が覚めた。建物がきしむような風切り音や、大粒の雨音が事態の大きさを物語っていた。しかし本日は何も予定がないので早朝から豪雨の中で朝風呂を浴び、朝食を食べてから本日の計画を考えてみる。

大広間のテレビでは各局がこぞって交通機関の運休を伝えているので今日は新店めぐりは難しいだろうなと考えている所に、都内の葛飾区で本日オープンというコチラの情報を見つけた。しかし草加駅を通る東武スカイツリーラインが全面運休との報道なので、最寄りの JR 金町駅までの移動手段が断たれてしまった。仕方なく諦めようと思ったが路線バスを乗り継げば、たどり着けるルートが浮上してきた。そこで午前9時のチェックアウトを待たずに、無料送迎バスで草加駅前まで向かってみる事にした。

8:50発の無料送迎バスの車内は全く知らない若手演歌歌手のイベントの告知などが貼られてあり、次回への訪問意欲を掻き立てる。私以外の乗客は泊まり客ではなく、朝風呂に訪れた地元の方がほとんどのようだ。すでに台風の雨風は落ち着いているが、草加駅周辺は運休の東武線が動き出すのを待つ人で混乱をきたしている。駅構内はおろか、南口バスロータリーの向こうまで長蛇の列となっている。私の目指す東武バスの乗り場にも20名以上の行列が出来ていて、草加駅から抜け出そうとする考えの人も多く見られた。

バスの予定時刻よりも遅れて運行している草05系統のバスを潮止橋北で金61系統へと乗り継いで、1時間半近くかけて最寄りの東水元二丁目バス停に着いた。ナビでは40分ほどの移動時間となっていたので実際は倍以上の時間がかかっていた。そこからは金町駅方向へ8分ほど歩くと、交差点のそばに開店祝いが並んだ店先を見つけた。薄黄色の愛らしい看板が目印となっているので近寄ってみると入口のドアに、何かが書かれた貼り紙があったのだ。

おめでたい船出となるはずのオープン初日に台風の影響でまさかの臨時休業かと頭をよぎったが、その貼り紙には1時間遅れの12時頃オープンと書かれていた。臨時休業ではないが前途多難なオープン初日には変わりなく、スタッフさん達の心中を察しながら近くで12時を待つ事にした。

その間に金町駅界隈を散策してみるが、明け方の台風で商店街の他の店も営業できずに準備に追われている店が多い。駅前の大手ハンバーガーチェーン店も人手不足のようで大混雑を見せる中でも、街の真ん中にポツンとある特殊浴場はちゃんと営業を開始していたので驚いた。

変更予定時間の12時の少し前に店先に戻ったが並びもなく、先頭にて再び待機に入る。店先には回収が間に合わなかった隣の飲食店のおしぼりが、ほったらかされていたりと平常ではない雰囲気だ。店頭の写真メニューを見ていると白湯系がお得意のようだが、あっさりと書かれた醤油系もあったので決めておいた。本来の開店時間より1時間は遅れたが予告通りに営業中の立て札に変わり、何とかオープンとなって一番客として店内に入った。

偏屈者の私が最初の客とは申し訳なく思いながら入店すると、明るく迎えられてカウンターに腰を下ろした。券売機はなく卓上メニューで再確認して、決めておいた表題と味玉の追加を口頭注文した。L字型のカウンター越しに店内を見回すと、重厚な木目調の内装に鮮やかな緑色の椅子が印象的だ。エアコンの効きが良くないようで、かなり暑い店内をお二人で切り盛りされている。調理場のガス台には大型の圧力鍋が置かれているので、鶏白湯系が主力商品なのは一目瞭然だ。私の後にもチラホラと来客があり、ワンロット毎にスープの味見をしっかりされている店主さんの動向を感心しながら眺めていると着席して6分で我が杯が到着した。

その姿は刷毛目の描かれた高台丼の中で、身分不相応な容姿を見せていた。と言うのも本日はトッピングがひとつ無料のオープン特典があるので、この見た目とボリュームで500円とは思えない景色を見せている。追加した味玉が無くても十分に見応えのありそうなラーメンに、店主さんの心意気を感じながらレンゲを手にした。

まずはスープをひとくち。表層の香味油は無秩序な大きさの粒子で幕を張っていて、ややオイル質な印象を受ける。その下層部には清らかに澄んだスープが見られ、ネーミングにも使われている〝懐かし〟がピタリと当てはまる清湯醤油を思わせる。具材の隙間を狙って液面にレンゲを沈めてみると、見た目と同じく清らかな鶏出汁らしい香りが立ち昇ってきた。500円という値段設定から、かなりの旨味の底上げを覚悟してスープを口に含んでみた。最初に感じたのは唇には油分が先行してくるが、思ったよりもサラリとしている。鶏油のようなコクの強さを想像していたが、粘度も弱く油っぽさは感じさせずにスープに上品な潤いを与えている程度だ。旨みの土台には鶏由来の深い旨みを感じ魚介出汁が奥行きを重ねていて、懸念された旨味の底上げも強くはない。そんなしっかりと炊かれたオーソドックスなスープに合わせるカエシも非常に穏やかで、舌や喉を刺すような刺激を全く感じずに胃袋へと流れ落ちていく。

続いての麺にも思わぬ朗報が待っていた。やはり500円という事でチープな特売麺とばかり思っていたが、持ち上げた麺質を見ただけで浅はかな考えだったと気付かされた。麺上げまでジャスト60秒の中細ストレート麺は、淡黄色に色づいたハリの強そうな手応えが持ち上げた箸先から伝わってくる。そこにはカンスイに頼って小麦粉の分量を削ったような安価な中華麺とは、全く別物の良麺を採用されていると分かった。そんな麺を一気にすすり上げるとシャープでスクエアな口当たりが舌の上で踊り、ハリのある弾力を持ちながらも歯切れの良さも兼ね備えている。この麺にばかりは〝懐かし〟の言葉が似合わない現代風で最先端な麺質に思えたが、茹で麺機を設置せずに大きな両手鍋にテボを突っ込んで麺を茹でるスタイルには昔ながらの懐かしさを感じた。

具材のチャーシューにも懐かしい要素のない鶏ムネ肉のレアチャーシューで、最新式の低温調理法で仕込まれている。しっかりと加熱されたタイプなのでレア感は無いが、安心して食べられる鶏チャーシューだ。盛り付け直前には角バットに並べて丁寧に温め直す一手間もかけられていた。そのため少しパサついた舌触りが気にはなるが、食べ応えと考えれば納得の仕上がりだ。

サービスの無料トッピングで追加した味玉もきちんと温めてあり、柔らか仕立ての口当たりを更に良く印象付けている。漬けダレの醤油感よりも出汁を利かせた味玉は好みの熟成タイプではないが、卵本来の旨みと適度な浸透のバランスタイプに仕上げてある。

メンマには板メンマを使われていて、ぬめりのある滑らかな舌触りが特徴的だ。特筆すべき点のない目立たない脇役ではあるが、噛み切れずに繊維が口に残ってしまう部分があって残念だった。

十字8切の海苔は香り高く鮮度の良さを感じられ、やや硬めの食感なので舌触りとしては及第点といったところ。

薬味の青ネギは繊細な小口切りで添えてあり、店主さんの調理技術の高さを思わせる。ただ乾いた切り口からは香りや歯触りの点では乏しく感じ、切り立ての薬味とは思えなかった。

中盤からも過剰な旨味の演出を感じずに食べ進める事ができ、気が付けば少しのスープを残しただけで完食していた。これを500円で提供し続けるのは大変なご苦労だと思うが、ジャンクな味に慣れてしまった近所の学生さん達にも食べて欲しいと思う清湯醤油系のラーメンだった。

この店が長く続いてくれる事を願いながら後会計を忘れぬように席を立って表に出ると、空模様は台風一過とはならず晴れやかではなかった。しかし台風の影響で困難な中で訪れる事が出来た私の気持ちはとても晴れやかで、このラーメンが金町に嵐を呼ぶような店になれば良いなと思った一杯でした。

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